【2024年版】OCR開発とは?OCRの種類やメリット・デメリット、おすすめの開発会社を紹介

OCR開発を検討中だけど、何から始めたら良いのか分からない…そんな悩みを抱えていませんか?

この記事では、OCR開発の基礎知識から種類、メリット・デメリット、開発の流れ、費用、そして開発会社選びまで、2024年最新の情報に基づいて網羅的に解説します。

OCRの基本的な仕組みや種類を理解することで、自社に最適なOCRシステムを選択するための判断材料を得られます。また、AI OCRなどの最新技術や、金融・医療・製造業といった業界別の導入事例も紹介することで、OCRの活用イメージを具体的に掴むことが可能です。

さらに、開発費用や開発会社の選び方、注意点なども詳しく解説しているので、開発プロジェクトを成功に導くための具体的なステップを理解できます。この記事を読み終える頃には、OCR開発に関する疑問が解消され、自信を持ってプロジェクトを進められるようになるでしょう。

本記事は、システム・アプリ発注ガイドのマーケティング担当がエンジニアと意見を共有した上で執筆しています。
システム開発に関してご相談やお困りごとがございましたらお気軽にお問い合わせください

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目次

OCR開発とは

OCR開発とは、Optical Character Recognition(光学的文字認識)の略称であるOCRの技術を用いて、画像やPDFなどの文書データから文字情報を自動的に抽出するためのシステムを開発することを指します。紙媒体の文書をデジタルデータに変換することで、データの検索、編集、分析などを容易にし、業務効率化やコスト削減に貢献します。

近年では、AI技術を活用したAI OCRの開発も進んでおり、従来のOCRでは難しかった手書き文字や複雑なレイアウトの文書にも対応できるようになっています。

OCRの基本的な仕組み

OCRの基本的な仕組みは、以下のステップで処理されます。

  1. 画像の入力:スキャナーやカメラなどで文書画像を取り込む、またはPDFファイルを読み込む。
  2. 前処理:ノイズ除去、傾き補正、解像度調整など、文字認識精度を高めるための画像処理を行う。
  3. 文字のセグメンテーション:画像から文字部分を切り出す。行や単語、文字ごとに分割する処理を行う。
  4. 特徴抽出:切り出された文字の特徴(線の長さ、角度、交点など)を数値データとして抽出する。
  5. 文字認識:抽出された特徴とデータベースに登録されている文字パターンを照合し、文字を特定する。AI OCRでは、機械学習モデルを用いて文字認識を行う。
  6. 後処理:認識結果の誤りを修正したり、レイアウト情報を復元したりする。辞書や文法規則を用いて、より自然な文章に整形する処理を行う。
  7. テキストデータの出力:認識結果をテキストデータとして出力する。CSV、Excel、テキストファイルなど様々な形式で出力可能。

OCR開発の目的と背景

OCR開発の主な目的は、業務効率化、コスト削減、データ活用です。紙媒体の文書をデジタル化することで、手作業でのデータ入力を省き、業務効率を大幅に向上させることができます。また、データの保存や管理にかかるコストも削減できます。さらに、デジタル化されたデータは、ビジネスインテリジェンスやデータ分析に活用することができ、新たなビジネス価値の創出に繋がります。

OCR開発の背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が挙げられます。企業は、業務プロセスをデジタル化することで、競争力を強化し、持続的な成長を目指しています。OCRは、DX推進における重要なツールの一つとして位置付けられています。

目的具体的な内容
業務効率化手入力作業の削減、データ入力時間の短縮、人為的ミスの防止
コスト削減人件費削減、紙媒体の保管コスト削減、データ管理コスト削減
データ活用データ分析によるビジネスインテリジェンス、顧客サービス向上、新商品開発

近年では、AI技術の進化により、OCRの精度が飛躍的に向上しています。特に、ディープラーニング技術を用いたAI OCRは、従来のOCRでは難しかった手書き文字や複雑なレイアウトの文書にも対応できるようになり、様々な業種で活用が進んでいます。例えば、金融業界では、口座開設申込書の自動処理、医療業界では、医療記録の電子化、製造業界では、製品検査データの自動入力などに利用されています。

また、RPA(Robotic Process Automation)と連携することで、OCRで読み取ったデータを自動的にシステムに入力するなど、更なる業務効率化を実現できます。クラウドサービスの普及もOCR開発を後押ししています。

クラウド型OCRサービスを利用することで、自社でシステムを構築する必要がなく、手軽にOCR機能を導入することが可能になります。AWS、Google Cloud、Microsoft AzureなどのクラウドベンダーがOCRサービスを提供しています。

OCRの種類

OCRには様々な種類があり、それぞれ特徴や用途が異なります。OCRの種類を理解することで、自社に最適なOCRを選択することが可能です。主なOCRの種類は以下の通りです。

クラウド型OCR

クラウド型OCRは、インターネット経由でOCRサービスを利用する形態です。ソフトウェアのインストールやサーバーの構築が不要なため、手軽にOCRを導入できます。

クラウド型OCRのメリット・デメリット

メリットデメリット
導入コストが低いインターネット環境が必要
メンテナンスが不要セキュリティリスク
scalabilityが高いカスタマイズ性が低い

オンプレミス型OCR

オンプレミス型OCRは、自社のサーバーにOCRソフトウェアをインストールして利用する形態です。セキュリティ面で安心感があり、カスタマイズ性も高いですが、導入コストや運用コストが高くなる傾向があります。

オンプレミス型OCRのメリット・デメリット

メリットデメリット
セキュリティが高い導入コストが高い
カスタマイズ性が高いメンテナンスが必要
インターネット環境が不要scalabilityが低い

モバイルOCR

モバイルOCRは、スマートフォンやタブレット端末で利用できるOCRです。外出先で手軽にOCRを利用できることがメリットです。名刺管理アプリや領収書管理アプリなどに利用されています。

モバイルOCRのメリット・デメリット

メリットデメリット
portabilityが高い精度はクラウド型やオンプレミス型に劣る場合がある
手軽に利用できる処理できるデータ量が少ない
カメラで撮影するだけでOCR可能オフラインでは利用できない場合がある

AI OCR

AI OCRは、人工知能(AI)を活用したOCRです。従来のOCRでは認識が難しかった手書き文字や複雑なレイアウトの文書でも、高い精度で文字認識が可能です。ディープラーニングを用いることで、データの種類や量が増えるほど精度が向上していくという特徴があります。

また、非定型フォーマットの文書にも対応できるため、活用の幅が広がっています。請求書契約書など、フォーマットが統一されていない文書のデータ化に役立ちます。

AI OCRのメリット・デメリット

メリットデメリット
認識精度が高い導入コストが高い場合がある
手書き文字や複雑なレイアウトにも対応可能学習データが必要
自動化による業務効率化誤認識の場合、修正が必要

これらのOCRの種類以外にも、特定の業界に特化したOCRや、特定の言語に特化したOCRなど、様々な種類のOCRが存在します。OCRを導入する際には、自社のニーズや目的に合わせて最適なOCRを選択することが重要です。

OCR開発における技術

OCR開発には、高度な技術の組み合わせが不可欠です。高精度な文字認識を実現するために、画像処理、文字認識、自然言語処理といった技術が重要な役割を果たします。それぞれの技術について詳しく見ていきましょう。

文字認識技術

文字認識技術は、画像データから文字情報を抽出する技術です。OCR開発の中核を担うこの技術は、パターンマッチング、機械学習、ディープラーニングといった様々な手法を用いて実現されます。

パターンマッチング

パターンマッチングは、予め登録された文字パターンと画像データを照合することで文字を認識する手法です。シンプルな手法ですが、フォントや文字サイズが限定されるため、汎用性には限界があります。

機械学習

機械学習を用いた文字認識では、大量のデータを使ってモデルを学習させることで、様々なフォントや文字サイズに対応できるようになります。SVM(サポートベクターマシン)やランダムフォレストといったアルゴリズムが利用されます。

ディープラーニング(深層学習)

ディープラーニングは、多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習の一種です。大量のデータから複雑な特徴を学習できるため、手書き文字やノイズの多い画像に対しても高い認識精度を実現できます。近年では、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)やRNN(再帰型ニューラルネットワーク)といったディープラーニング技術がOCR開発で広く活用されています。

画像処理技術

画像処理技術は、文字認識の精度向上に欠かせない要素です。ノイズ除去、二値化、傾き補正といった処理によって、文字認識に適した画像データに変換します。

ノイズ除去

画像データには、汚れやノイズが含まれている場合があります。ノイズ除去処理によって、これらのノイズを除去し、文字認識の精度を向上させます。代表的なノイズ除去手法には、メディアンフィルタやウィーナーフィルタなどがあります。

二値化

二値化は、画像データを白と黒の2値に変換する処理です。文字と背景を明確に分けることで、文字認識の精度を高めます。適応的二値化や大津の二値化といった手法が用いられます。

傾き補正

画像が傾いている場合、文字認識の精度が低下する可能性があります。傾き補正処理によって、画像の傾きを修正し、正確な文字認識を実現します。ハフ変換やラドン変換といった手法が利用されます。

自然言語処理

自然言語処理(NLP)は、人間が日常的に使用する言語をコンピュータで処理するための技術です。OCRで抽出されたテキストデータを分析し、意味理解や文脈把握を行うことで、より高度な情報活用を可能にします。

形態素解析

形態素解析は、文章を意味を持つ最小単位(形態素)に分割する技術です。MeCabやJuman++といった形態素解析エンジンが広く利用されています。

固有表現抽出

固有表現抽出は、テキストデータから人名、地名、組織名といった固有表現を抽出する技術です。辞書ベースの手法や機械学習ベースの手法があります。

キーワード抽出

キーワード抽出は、テキストデータから重要なキーワードを抽出する技術です。TF-IDFやRAKEといったアルゴリズムが用いられます。

技術手法説明
文字認識技術パターンマッチング登録されたパターンと照合
機械学習SVM、ランダムフォレスト等
ディープラーニングCNN、RNN等
画像処理技術ノイズ除去メディアンフィルタ、ウィーナーフィルタ等
二値化適応的二値化、大津の二値化等
傾き補正ハフ変換、ラドン変換等
自然言語処理形態素解析MeCab、Juman++等
固有表現抽出辞書ベース、機械学習ベース等
キーワード抽出TF-IDF、RAKE等

これらの技術を適切に組み合わせることで、高精度かつ多機能なOCRシステムを開発することが可能になります。OCR開発においては、それぞれの技術の特性を理解し、最適な技術を選択することが重要です。

OCR開発のメリット

OCR開発によって得られるメリットは多岐に渡り、業務効率化やコスト削減、データの有効活用など、様々な側面で企業の成長に貢献します。特に、大量の紙文書を扱う企業にとっては、OCRの導入は業務プロセスを革新し、デジタル化を推進する上で非常に有効な手段となります。

業務効率化

OCRを導入することで、これまで手作業で行っていたデータ入力を自動化できます。人為的なミスを削減し、入力にかかる時間を大幅に短縮できるため、従業員はより付加価値の高い業務に集中できます。また、データ入力作業の負荷が軽減されることで、従業員のモチベーション向上にも繋がります。

データ入力の自動化

OCRは、紙文書の文字情報を自動的にデジタルデータに変換するため、手入力の必要性をなくします。これにより、データ入力にかかる時間と労力を大幅に削減し、業務効率を向上させます。

人的ミスの削減

手作業によるデータ入力では、どうしてもヒューマンエラーが発生する可能性があります。OCRを活用することで、このリスクを最小限に抑え、データの正確性を担保できます。

業務プロセスの改善

OCRは、データ入力だけでなく、その後のデータ処理プロセスにも良い影響を与えます。例えば、請求書処理や注文処理などの業務フローを自動化することで、業務全体の効率化を実現できます。

コスト削減

OCR開発は、一見高額な投資に思えるかもしれませんが、長期的には大幅なコスト削減に繋がります。人件費の削減だけでなく、紙文書の保管費用や、ミスによる損失を減らすことにも貢献します。

人件費の削減

データ入力作業を自動化することで、人件費を大幅に削減できます。削減された人件費は、他の事業投資や人材育成に活用できます。

保管スペースの削減

OCR導入により、紙文書をデジタルデータ化することで、保管スペースを削減できます。特に、大量の紙文書を保管している企業にとっては、大きなメリットとなります。

データ活用

OCRによってデジタル化されたデータは、様々な用途に活用できます。顧客データ分析、売上予測、市場調査など、データに基づいた意思決定を支援し、ビジネスの成長を促進します。

データ分析

OCRで取得したデータは、BIツールなどと連携することで、様々な分析に活用できます。顧客の購買動向や市場トレンドなどを分析し、ビジネス戦略に役立てることができます。

業務改善

OCRで取得したデータを分析することで、業務プロセスの課題を特定し、改善につなげることができます。例えば、ボトルネックとなっている工程を特定し、効率化を図ることができます。

新サービス開発

OCRで取得したデータは、新サービスの開発にも活用できます。顧客ニーズを分析し、新たなサービスを開発することで、競争優位性を築くことができます。

業務システムとの連携

連携システム活用例
CRM(顧客関係管理)顧客情報の一元管理、顧客セグメント分析
ERP(統合基幹業務システム)受発注管理、在庫管理の効率化
BIツールデータ分析、可視化による経営判断の支援

上記のように、OCR開発によるメリットは多岐に渡ります。自社の課題やニーズに合わせてOCRを導入することで、大きな効果を得ることが期待できます。

OCR開発のデメリット

OCR開発には、メリットだけでなくデメリットも存在します。OCR導入を検討する際には、これらのデメリットも理解した上で、適切な対策を講じる必要があります。主なデメリットとして、精度の課題、費用、セキュリティリスクが挙げられます。

精度に関する課題

OCRの精度は100%ではなく、誤認識が発生する可能性があります。特に、手書き文字や低品質な画像の場合、精度は低下する傾向にあります。誤認識によって修正作業が発生し、かえって業務効率が低下するケースも考えられます。また、文字の種類(例えば、日本語、英語、中国語など)やフォントによっても精度は変動します。

精度低下の原因

  • 手書き文字の癖や崩し
  • ノイズの多い画像
  • かすれや汚れのある文書
  • 複雑なレイアウトの文書
  • 非定型フォーマット

精度向上のための対策

  • 高画質スキャナーの利用
  • 画像の前処理(ノイズ除去、傾き補正など)
  • AI OCRの活用
  • 辞書登録による認識精度向上
  • OCRエンジンに特化した学習データの利用

費用

OCR開発には、開発費用だけでなく、運用費用も発生します。初期費用として、OCRソフトウェアのライセンス費用やサーバー構築費用、開発費用などがかかります。また、運用費用として、システムの保守費用やアップデート費用、ライセンス更新費用などが継続的に発生します。

クラウド型OCRの場合は、月額利用料や従量課金制となる場合が多いです。オンプレミス型の場合は、初期投資は大きくなりますが、長期的に見るとクラウド型より安価になる場合もあります。

種類初期費用運用費用
クラウド型OCR低い月額利用料、従量課金
オンプレミス型OCR高い保守費用、アップデート費用

セキュリティリスク

OCRで扱うデータには、個人情報や機密情報が含まれる場合があり、セキュリティ対策は必須です。データの漏洩や不正アクセスを防ぐためには、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。特にクラウド型OCRを利用する場合は、ベンダーのセキュリティ対策状況を確認することが重要です。オンプレミス型の場合は、自社でセキュリティ対策を構築・運用する必要があります。

セキュリティリスクへの対策

  • アクセス制御の実装
  • データの暗号化
  • セキュリティ監査の実施
  • ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得
  • プライバシーマークの取得
  • セキュリティに関する契約条項の確認
  • 多要素認証の導入

これらのデメリットを踏まえ、自社のニーズに合ったOCRを導入することが重要です。導入前に、メリット・デメリットを比較検討し、費用対効果やセキュリティリスクを十分に評価しましょう。また、トライアル版を利用して、実際の精度や使い勝手を確認することも有効です。

OCR開発に必要な費用

OCR開発にかかる費用は、開発規模、機能要件、開発会社によって大きく異なります。そのため、事前にしっかりと見積もりを取得し、予算と照らし合わせる必要があります。ここでは、OCR開発に必要な費用の内訳や、費用を抑えるためのポイントなどを解説します。

開発規模による費用の違い

OCR開発の規模は、認識対象となる文字の種類や量、必要な機能、対応する言語などによって決まります。小規模な開発であれば数百万円程度で済む場合もありますが、大規模な開発になると数千万円以上かかることもあります。以下に、開発規模による費用の目安を示します。

開発規模費用目安主な機能
小規模数百万円特定の種類の帳票の読み取り、シンプルなデータ出力
中規模1,000万円~2,000万円複数種類の帳票の読み取り、データの加工・編集機能、データベース連携
大規模2,000万円~複雑な帳票の読み取り、高度なAI機能の搭載、大規模データ処理、システム連携

上記はあくまで目安であり、実際の費用は要件によって変動します。例えば、手書き文字の認識や多言語対応など、高度な機能が必要な場合は、費用が割高になる傾向があります。

開発会社による費用の違い

OCR開発を依頼する開発会社によっても、費用は大きく異なります。大手SIerは実績と信頼性が高い一方で、費用が高額になる傾向があります。一方、ベンチャー企業や中小企業は、比較的低価格で開発を引き受けてくれる場合が多いですが、実績や技術力に注意が必要です。また、クラウド型のOCRサービスを提供するベンダーも存在し、初期費用を抑えて利用することができます。

以下に、開発会社の種類による費用の目安と特徴を示します。

開発会社の種類費用目安特徴
大手SIer (例: NTTデータ、富士通)高額実績豊富、高い信頼性、大規模開発にも対応可能
ベンチャー企業 (例: ABEJA、Cogent Labs)中程度AI技術に強み、柔軟な開発体制
中小企業比較的安価特定の業界に特化したノウハウを持つ場合も
クラウドベンダー (例: Google Cloud Platform、Amazon Web Services)従量課金制初期費用を抑えて利用可能、スケーラビリティが高い

各社のサービス内容と料金

各社のサービス内容と料金は、公式サイトや問い合わせを通じて確認することができます。複数の会社に見積もりを依頼し、比較検討することが重要です。

また、開発費用だけでなく、運用保守費用についても考慮する必要があります。クラウド型のOCRサービスを利用する場合は、月額料金や従量課金が発生します。オンプレミス型の場合は、サーバーの維持費やシステム管理費用などが発生します。

OCR開発の費用を抑えるためには、要件を明確にすること、既存のOCRサービスを活用すること、開発会社を慎重に選定することなどが重要です。

OCR開発の流れ

OCR開発は、要件定義から始まり、設計・開発、テスト・運用という流れで進みます。それぞれのフェーズで重要なポイントを押さえることで、高精度で安定したOCRシステムを構築することができます。

要件定義

OCR開発の最初のステップは要件定義です。このフェーズでは、どのようなドキュメントを読み取りたいのか、どのようなデータを取得したいのか、どの程度の精度を求めるのか、どのようなシステムに統合したいのかなど、OCRシステムに求める要件を明確に定義します。

要件定義が曖昧だと、後々のフェーズで手戻りが発生し、開発期間の延長やコスト増加につながる可能性があります。そのため、関係者全員で十分に議論し、合意形成を図ることが重要です。

要件定義では、以下の項目を具体的に決定します。

  • 読み取り対象のドキュメントの種類(請求書、領収書、契約書など)
  • 取得したいデータの種類(日付、金額、商品名など)
  • 必要な精度レベル
  • システムへの連携方法
  • セキュリティ要件
  • 予算とスケジュール

設計・開発

要件定義に基づいて、OCRシステムの設計・開発を行います。このフェーズでは、適切なOCRエンジンを選定し、画像処理技術や自然言語処理技術などを組み合わせて、要件を満たすシステムを構築します。開発言語としては、Python、Java、C++などがよく用いられます。

設計・開発フェーズでは、以下の作業を行います。

  • OCRエンジンの選定(Google Cloud Vision API、Amazon Textractなど)
  • 画像前処理の実装(ノイズ除去、傾き補正など)
  • 文字認識処理の実装
  • 後処理の実装(データの正規化、検証など)
  • システム連携の実装
  • ユーザーインターフェースの設計・開発

テスト・運用

開発したOCRシステムは、十分なテストを実施して精度と安定性を確認します。テストでは、様々な種類のドキュメントを用いて、正しくデータが抽出されるか、エラーが発生しないかなどを検証します。テストが完了したら、システムを本番環境に導入し、運用を開始します。運用開始後も、定期的なメンテナンスや精度監視を行い、システムの安定稼働を維持することが重要です。

テスト・運用フェーズでは、以下の作業を行います。

  • 単体テスト
  • 結合テスト
  • システムテスト
  • 性能テスト
  • 運用監視
  • メンテナンス

各フェーズにおける具体的な作業内容や期間は、開発規模や要件によって異なります。そのため、開発前に綿密な計画を立て、各フェーズを着実に進めていくことが、OCR開発の成功には不可欠です。

フェーズ作業内容期間(目安)
要件定義読み取り対象のドキュメント、取得したいデータ、精度レベル、システム連携方法、セキュリティ要件、予算、スケジュールなどを決定1~2週間
設計・開発OCRエンジンの選定、画像前処理、文字認識処理、後処理、システム連携、UI設計・開発2~6ヶ月
テスト・運用単体テスト、結合テスト、システムテスト、性能テスト、運用監視、メンテナンス1~2ヶ月

OCR開発を成功させるためには、各フェーズを丁寧に進めることが重要です。特に、要件定義フェーズでしっかりと要件を固めることで、後々の手戻りを防ぎ、開発期間の短縮やコスト削減につながります。また、開発会社との綿密なコミュニケーションも重要です。開発会社に要件を明確に伝え、進捗状況を共有することで、スムーズな開発を進めることができます。

OCR開発の注意点

OCR開発を成功させるためには、いくつかの注意点に留意する必要があります。精度検証、データセキュリティ対策、OCR導入後の運用体制など、多岐にわたるポイントを事前に理解しておくことで、開発におけるリスクを最小限に抑え、スムーズな導入を実現できます。OCR開発における注意点として特に重要なのは以下の3点です。

精度検証の重要性

OCR開発において、最も重要な注意点の一つが精度検証です。OCRの精度は、使用する文字の種類、フォント、画像の品質、レイアウトなど、様々な要因に影響を受けます。そのため、開発段階から実際の運用環境を想定したテストデータを用いて、徹底的な精度検証を行う必要があります。

検証には、Google Cloud Vision APIMicrosoft Azure Computer Vision などのクラウドサービスを活用する方法もあります。また、認識精度が低い場合は、辞書登録や学習データの追加、パラメータ調整など、改善策を検討する必要があります。認識精度の目標値を事前に設定し、その目標値を達成できるまで検証と改善を繰り返すことが重要です。

さらには、運用開始後も定期的な精度検証を行い、精度の維持・向上に努める必要があります。精度検証を怠ると、誤認識によるデータ入力ミスや業務の遅延につながる可能性があります。

データセキュリティ対策

OCRは機密情報を含む文書を扱うことも多いため、データセキュリティ対策は非常に重要です。特に個人情報や顧客情報などを扱う場合は、情報漏洩のリスクを最小限に抑える必要があります。具体的には、データの暗号化、アクセス権限の管理、セキュリティ監査の実施など、厳格なセキュリティ対策を講じる必要があります。

クラウド型OCRを利用する場合は、サービス提供会社のセキュリティ対策についても確認することが重要です。ISO 27001やプライバシーマークなどの認証取得状況を確認することで、信頼できるサービスを選択できます。また、オンプレミス型OCRの場合は、自社でセキュリティ対策を構築・運用する必要があるため、より高度な専門知識と管理体制が求められます。

セキュリティ対策を怠ると、情報漏洩による企業の信用失墜や損害賠償などのリスクに繋がります。

OCR導入後の運用体制

OCR導入後も、スムーズな運用を継続するためには、適切な運用体制を構築することが重要です。OCRの運用には、システムの監視、エラー対応、精度管理、メンテナンスなど、様々な業務が発生します。これらの業務を誰がどのように担当するかを事前に明確にしておく必要があります。

また、OCR導入によって業務プロセスがどのように変化するかを把握し、担当者に適切なトレーニングを実施することも重要です。さらに、OCRの運用状況を定期的に評価し、問題点があれば改善策を検討する必要があります。運用体制が不十分だと、OCRの性能を十分に発揮できず、期待した効果を得られない可能性があります。

OCR導入後の運用における考慮事項

項目内容
エラー対応OCRの誤認識によるエラー発生時の対応手順を明確化し、担当者を定めておく必要があります。例えば、修正作業を行う担当者、修正内容の承認を行う担当者などを決めておくことが重要です。
精度管理定期的にOCRの認識精度を検証し、低下が見られる場合は原因を調査し、改善策を講じる必要があります。
メンテナンスシステムの安定稼働を維持するために、定期的なメンテナンス作業が必要です。ソフトウェアのアップデートやハードウェアの保守など、必要な作業を計画的に実施する必要があります。
ドキュメント管理OCRシステムの操作マニュアルやトラブルシューティングガイドなどを整備し、担当者がいつでも参照できるようにしておく必要があります。
継続的な改善OCRの運用状況を定期的に見直し、改善点を洗い出し、システムの最適化を図る必要があります。利用状況のデータ分析やユーザーからのフィードバック収集などを通して、継続的な改善活動を行うことが重要です。

OCR開発におすすめの開発会社

OCR開発を検討する際に、最適な開発会社を選ぶことはプロジェクトの成功に不可欠です。ここでは、実績、専門性、サポート体制などを考慮し、おすすめの開発会社を3つのカテゴリに分けてご紹介します。

実績豊富な大手SIer

大手SIerは、豊富な開発実績と高い技術力を持ち、大規模で複雑なOCR開発プロジェクトにも対応可能です。充実したサポート体制も魅力です。ただし、費用は比較的高額になる傾向があります。

会社名サービス内容料金特徴
NTTデータ文書電子化ソリューション、AI-OCR個別見積大規模システム開発実績、高セキュリティ
富士通AI活用のOCRサービス、RPA連携個別見積幅広い業種への導入実績、コンサルティング力
NECクラウド型OCR、AI-OCR個別見積顔認証技術との連携、生体認証ソリューション

AI OCRに特化したベンチャー企業

AI OCRに特化したベンチャー企業は、最新の技術と柔軟な対応力を強みとしています。特定の業種や業務に特化したソリューションを提供している場合もあります。費用は比較的リーズナブルな傾向があります。

会社名サービス内容料金特徴
AI insideAI-OCRプラットフォーム「DX Suite」月額/従量課金高精度な文字認識、ノーコードで開発可能
ラクスルクラウド型OCR「楽楽明細」月額/従量課金経理業務に特化、会計ソフトとの連携
Cogent LabsAI-OCR「Tegaki」個別見積/従量課金手書き文字認識に強い、金融機関向けソリューション

OCR開発サービスを提供するクラウドベンダー

クラウドベンダーは、クラウド上で利用できるOCRサービスを提供しています。手軽に導入でき、スケーラビリティも高いのが特徴です。従量課金制のため、初期費用を抑えることができます。

会社名サービス内容料金特徴
Amazon Web Services (AWS)Amazon Textract従量課金高精度な文字認識、様々な言語に対応
Google Cloud Platform (GCP)Document AI従量課金機械学習を活用したドキュメント理解、フォーム処理
Microsoft AzureComputer Vision API、Form Recognizer従量課金画像分析API、帳票認識に特化

上記以外にも、OCR開発サービスを提供する企業は多数存在します。それぞれの企業の強みや得意分野を比較検討し、自社のニーズに合った開発会社を選びましょう。開発会社の選定においては、費用だけでなく、技術力、サポート体制、実績などを総合的に判断することが重要です。

OCR開発事例

OCR開発は様々な業界で導入されており、業務効率化やコスト削減、データ活用に貢献しています。ここでは、具体的なOCR開発事例を業界別にご紹介します。

金融業界におけるOCR開発事例

銀行における紙の帳票処理の自動化

銀行では、口座開設申込書や振込依頼書など、大量の紙の帳票を処理する必要があります。OCRを導入することで、これらの帳票を自動的にデータ化し、業務効率化を実現できます。例えば、みずほ銀行では、OCRとRPAを組み合わせることで、年間約40万時間の作業時間削減を実現しました。

保険会社における保険金請求処理の自動化

保険会社では、保険金請求の際に提出される診断書や領収書などの書類を処理する必要があります。OCRを導入することで、これらの書類を自動的にデータ化し、請求処理の迅速化と正確性の向上を実現できます。例えば、東京海上日動火災保険では、AI OCRを導入することで、保険金請求処理にかかる時間を大幅に短縮しました。

医療業界におけるOCR開発事例

病院における電子カルテへの情報入力の効率化

病院では、患者の診察記録や検査結果などを電子カルテに入力する必要があります。OCRを導入することで、紙のカルテや検査結果表を自動的にデータ化し、電子カルテへの入力作業を効率化できます。例えば、東京大学医学部附属病院では、OCRを導入することで、医師の事務作業負担を軽減し、診療に集中できる環境を整備しました。

製薬会社における治験データの効率的な収集

製薬会社では、新薬開発のための治験において、大量のデータ収集が必要です。OCRを導入することで、症例報告書などの紙資料を自動的にデータ化し、データ収集の効率化と正確性の向上を実現できます。例えば、武田薬品工業では、OCRを活用することで、治験データの収集・管理にかかる時間を大幅に短縮しました。

製造業界におけるOCR開発事例

工場における部品管理の効率化

工場では、様々な部品を管理する必要があります。OCRを導入することで、部品に印字された型番や製造番号などを自動的に読み取り、在庫管理システムにデータを入力できます。これにより、在庫管理の効率化と正確性の向上を実現できます。例えば、トヨタ自動車では、OCRを活用した部品管理システムを導入することで、在庫管理の効率化とコスト削減を実現しました。

物流業界における伝票処理の自動化

物流業界では、配送伝票など、大量の紙の伝票を処理する必要があります。OCRを導入することで、これらの伝票を自動的にデータ化し、配送状況の管理や請求処理を効率化できます。例えば、ヤマト運輸では、OCRを導入することで、伝票処理にかかる時間を大幅に短縮し、業務効率化を実現しました。

業界OCR導入事例導入効果
金融銀行の帳票処理自動化、保険金請求処理の自動化業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上
医療電子カルテへの情報入力効率化、治験データの効率的な収集医師の事務作業負担軽減、データ入力の正確性向上
製造工場の部品管理効率化、物流における伝票処理自動化在庫管理効率化、配送状況管理の効率化

これらの事例以外にも、OCRは様々な業界で活用されています。OCRを導入することで、業務効率化、コスト削減、データ活用など、多くのメリットを得ることができます。今後のOCR技術の発展により、更なる活用範囲の拡大が期待されます。

まとめ

この記事では、OCR開発について、その種類、メリット・デメリット、開発会社選びのポイントなどを解説しました。OCR開発は、業務効率化やコスト削減、データ活用といった多くのメリットをもたらします。種類もクラウド型、オンプレミス型、モバイルOCR、AI OCRなど多様化しており、それぞれの特性を理解した上で最適なものを選択することが重要です。

特にAI OCRは、ディープラーニング技術を活用することで従来のOCRよりも高い精度を実現しており、複雑な帳票や手書き文字の認識にも対応可能です。開発費用は、開発規模や開発会社によって大きく異なります。大手SIerは豊富な実績と高い信頼性を誇りますが、費用は高額になりがちです。一方、ベンチャー企業はAI OCRに特化した専門知識や技術力を持つ場合が多く、費用を抑えられる可能性があります。

また、クラウドベンダーは手軽に利用できるOCR開発サービスを提供しており、初期費用を抑えたい場合に適しています。それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、自社のニーズに合った開発会社を選びましょう。OCR開発を成功させるためには、精度検証、データセキュリティ対策、運用体制の構築など、注意すべき点がいくつかあります。

これらの点に留意することで、OCR導入の効果を最大限に引き出すことができます。本記事が、OCR開発を検討する企業にとって有益な情報となれば幸いです。

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